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住宅新法の考え方(なりたち) [湘南の家づくり]

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少し難しい話になるかもしれません。

ゆっくりお読み戴けたら、幸です。

長くなりますので、2日に亘って書いていきます。


耐震偽装の姉歯事件をきっかけとして、『住宅瑕疵担保責任履行確保法』が

制定され、「来年(2009年)10月1日以降に引き渡す住宅」について、

「供託金」もしくは「保険加入」が義務づけられることになりました。


これまでは2000年度に施行された「住宅の品質確保の促進に関する法律」で、

10年間の『瑕疵担保責任保険』がありました。

この『瑕疵担保責任保険』への加入は任意でしたが、今回の『住宅瑕疵担保履行法は義務』

として施行されます。


今回義務付けられる対象となる事業者は、「注文・賃貸住宅の請負人」(建設業者)と、

「分譲住宅の売り主」(宅地建物取扱業者=不動産屋)です。


問題は『大手のハウスメーカーや、大量販売する大規模不動産業者』ほど、

1戸当たりの負担が軽くなっていることです。

過去10年間の建築戸数や販売実績で負担する金額が決まりますが、

1戸しか建てていないような零細工務店の場合の供託金は2000万円、

2万戸を新築もしくは販売している大手企業は、1戸当たり3万円と極安です。


10年間で1戸だけ造っているような町の零細・中小企業が2000万円もの『無駄金』を

10年間もの長期に亘って寝かしておける状態ではないことが解っていながら、

このような理不尽な法律が出来上がりました。


供託が出来ない零細・中小業者のためには『保険』が用意されてはいるのですが・・・。

保険料は国会答弁を聞く限り、「1戸しか建てられない業者の場合で、8万円ほど」

になるようです。


問題はまだあります。

大手業者が選択するであろう供託金は、瑕疵がなければ『10年後には全額戻ります』

しかし、零細業者が加入する保険の場合は、瑕疵があろうとなかろうと『掛け捨て』です。

そして、『保険住宅には、第三者機関による大変厳しい検査』が何回もありますが、

『供託住宅は検査が免除される』のです。


何故、このような零細・中小建築業者を切り捨てるような法律になったのか?

それには、以下のような「からくり」が見え隠れしています。

国土交通省は、2006年4月から6月にかけて「瑕疵担保責任研究会」を開催しました。

その時の「報告書」を『社会資本整備審議会建築部会』に提出したところ、

「事実上、保険加入の一律義務化」につながるとして、建築部会から反発が起きました。

これをきっかけに、国土交通省は「保険」と「供託」の2本立てを再提案したのです。

社会資本整備審議会建築部会には、大手ハウスメーカー住友林業(株)の取締役社長も

名前を連ねているのです。



こうして大手ハウスメーカー及び大手不動産業者を優遇する『供託制度』が出来上がり、

零細・中小企業は『過酷な保険加入』を余儀なくされる法律の出現となったのです。



このように、中小・零細業者にとっては大変な法律の出現ですが、

次回は、それでも「生き残る道はある」をテーマとして書いていきます。


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denn

建て主が保護されるのはいいかと?思いますが・・
労災のように使いずらそうな制度であれば、役所が儲けるだけか?
それにしても料率が高いですね><
次の記事が楽しみの意味のナイス!いれときます^^
by denn (2008-05-20 02:33) 

たいせい

 この件は、私も近いうちに記事にしなくてはならないと思っていました。
 「消費者保護」と名目は美しいのですが、有る意味こだわりの住宅を建てる建築関係者を排除するための制度のような気がして成りません。
 実際、建物に関する訴訟例などを見ても大手ハウスメーカーが必ずしも信頼性の高い建物を建てているわけではなく、その方達やいい加減な施工の建売業者などに免罪符を与える結果になるのを心配しています。
 一番の消費者保護は、信頼性のおける建物(瑕疵のない建物)が普通に建つことで、それを担保する制度が出来た上で、考えられるべき制度のように思っています。

 もっとも、ハウスメーカーの原価率などを考えると同じ施工価格であれば販管費のかからない方がより信頼性の高い建物を建てられると言う状況に変わりはなく、ハウスメーカーとの差別化を真剣に考えねばならない時運がますます到来してきているのかもしれません。
by たいせい (2008-05-20 10:04) 

浜松自宅カフェ

この制度、漠然と知っているだけでしたが、かなり重い内容なのだと言う
ことがわかりました。
日本中が均質な工業化住宅で埋め尽くされた状態を考えると「ゾッ」と
します。善良で良質な住宅を供給する工務店は絶対生き残り、それなりの
収入を得るべきだと思っています。
by 浜松自宅カフェ (2008-05-20 20:44) 

こう

こういった実情を消費者が理解すべきですね。
かつては、ハウスメーカーの家を買おうとしていましたが、今はハウスメーカーや建て売り業者から安心安全の住宅を手に入れることは、かなり困難だと思うようになりました。
by こう (2008-05-22 12:21) 

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