窯業系サイディングの功罪 [湘南の家づくり]
日本窯業外装材協会の調査によると、戸建て住宅や低層集合住宅の約7割が、
外壁に窯業系サイディングを採用しているという結果が出ています。
今日は『窯業系サイディング』の話です。
窯業系サイディングとは・・・
「セメントにけい酸質原料、繊維質原料や混和材を入れて板状に成形した住宅用外壁材」です。
タイル調・石目調など色々な模様が付けられて成形されていて、最近の外壁の主流となっていますので、
大抵の方がご存じなのではないでしょうか?
窯業系サイディングは美観上非常に優れていることと、材料として成形されているためサイズや重さも均一で、
使い勝手が非常によく、施工時間の短縮も図れるため、時代の寵児のように言われて殆どのハウスメーカーの
標準仕様となっていますが、実は、かなりの『問題児』でもあるのです。
つい最近まで、アスベストが混入されている窯業系サイディングが作られていました。
最近では2004年に作られたものにまで、アスベストを混入していたメーカーもあります。
しかし、サイディングそのものに含まれるアスベストは安定しており、割ったり、切ったりしない限り
ほぼ安全だと考えられています。
窯業系サイディングの出荷量の大半(約53%)を占めるのは、厚さ12mmの製品です。
昨年JIS(日本工業規格)で定められた厚さの最小は、『耐久性に問題あり』として、
従来の12mmから14mmに引き上げられました。
つまり、これまでに一番多く製造され、使われてきた厚さ12mmの製品は、
『ダメ出し』をされたことになります。
実際に私達がリフォームなどで見る限り、厚さ12mmの製品はかなりの確率で酷い劣化が起きており、
湿気で外壁が波打ったり、隙間が生じたり、割れたりしている事が多いのです。
窯業系サイディングは、外壁に使われて5~7年で表面の防水層が劣化してしまいます。
そのため、遅くとも10年目ぐらいには、塗装の塗り替えが必要なのですが、
ハウスメーカーの担当者の中には『半永久的』と言っている人もいるようです。
窯業系サイディングの表面には「セメント版に、防水材として塗装が施されているだけ」
ですから、表面の塗幕の劣化と共に急激に水を吸って、変形や割れを生じ、
特に『寒冷地では冬場の凍結による爆裂』を引き起こします。
東北地域以北では、その厚さ如何に関わらず、窯業系サイディングを外壁に使用すること自体に
問題がありそうです。
サイディングの継ぎ目に施こされたシーリング材の劣化による「ひび割れや剥がれ」についても
こまめな点検と補修が必要です。
継ぎ目のシーリング材は、10年毎に「打ち替え」(既存を撤去して、新たに施工し直すこと)
の必要があります。
どんなに保たせたとしても、10年毎位の塗り替え時には「打ち替え」る必要があるのです。
また、シーリング材の種類によっては、3年でダメになるものもあります。
しかし、そのようなシーリング材であっても、使用された直後にはその他のシーリング材との見分けは不可能です。
>
また、継ぎ目のシーリング材の下には、「アルミジョイナー」(目地ジョイナー)と呼ばれる金物が
入れられています。
「この金物が入っているから、継ぎ目の防水は完璧です」と説明をする工事屋さんや現場監督さんもいるようです。
これは『防火目的』で使われているもので、防水の役目は全くありません。
従って、継ぎ目のシーリング材が剥がれて、このアルミジョイナーが見える状態になっているような場合には、
「壁の中は、既に雨が入り放題」ということになります。
湿気の粒子は、雨粒のおよそ「250万分の1」という小さな粒子です。
そのため、室内で生じた湿気は、内装材の隙間を通って壁の中にどんどん侵入します。
通常、壁の中に入り込んだ湿気には逃げ場がなく、外壁材の裏で結露となります。(壁体内結露)
そのため、窯業系サイディングを使用した住宅に於いては、石油を燃やして暖をとる暖房器具の使用は
壁体内結露を大幅に増やすこととなって不適です。(石油は燃焼によって、燃やした量の110%の水を生じます)
一般的な窯業系サイディングの裏面には、建物内部から排出される水分の吸収を防ぐために、
シーラーの塗布がなされています。
しかし、表面側の塗膜とは違ってシーラーには「一時的な防水性能」しかありません。
そのため「壁体内結露や壁の中の配管の接続部劣化による水漏れ」等があった場合には、
セメント板であるサイディング自体が水分を吸い込んでしまって、
劣化を早めるだけではなく、冬場には殊更寒い家となってしまいます。
窯業系サイディングについては、他にも知られていない大きな「欠点」とも言うべき『特徴』があります。
それは『蓄熱しやすい』という『特徴』です。
夏場においては『蓄熱』によって、外壁の表面温度が極めて高くなり、その熱が室内に放射されます。
窯業系サイディングの家は、夏場に極めて「暑い家」となってしまうのです。
外壁がモルタルの家
外壁が窯業系サイディングの家
気温35度C、晴天下での赤外線カメラによる温度の違いです。(他社のホームページから、お借りしました)
断熱材が入っているから大丈夫(?)・・・でしょうか?!
断熱材を入れたのは「あなた」ですか?だったら、大丈夫かも知れません。
しかし、私がリフォーム時に見る限り、『断熱材の不連続』がなかった家は、ゼロパーセントです。
つまり、断熱材を入れにくい箇所には入っておらず、継ぎ目は大きく口を開けているお宅が殆どなのです。
まだまだ断熱材は「いれればいい」と思っている職人さんが多く、断熱材のの入れ方が
『まるっきり、解っていない』職人さんが多いのです。
『断熱材は隙間なく、継ぎ目も連続性をもって』入れなければ、余計に「壁体内結露」を増やすことになるのです。
「うちはバッチリ断熱材が入っている『はず』です!」と言ったお施主様がいました。
開けてみると、床下も壁も天井裏にも「全く何も入っていない」お宅(建売住宅)でした。
この暑さ寒さやサイディングの劣化を解消するには、7~10年毎のインターバルを守って
外壁の塗り替えをすることと、断熱材の切れ目を無くすこと、そして壁の中の通気を考えることしか手はありません。
最近、「外壁の蓄熱」を問題視して『金属サイディングによるカバー工法』を勧めている
一部のリフォーム業者もいるようですが、この方法は『臭い物には蓋』のやりかたで、
事態を余計悪い方向へ導き、『論外!』としか言いようがありません。
窯業系サイディングについて勉強している工務店があります。 ↓
三物建設株式会社は、湘南(茅ヶ崎 逗子 葉山 鎌倉 平塚 藤沢) エリアを中心に、マンションリフォームからペットリフォームまでお客様にとって最高の 「暮らし」をご提案いたします。
最近の家はこの外壁タイルでカラフルで、いつまでもきれいという感覚があったので、このことは意外で知りませんでした。
by アサギいろ (2009-02-02 22:01)
雨水や結露など、被害が目でわかる頃にはどーしようもなくなってるから怖いですよね。
私も心配になってセキスイのパンフレットを引っ張り出してみましたら、SHセラミックウオール外壁を使用していると出てました。
まーパンフレット見てもいいことしか書いてませんけど。。。(^-^;)
by ひろりん (2009-02-02 22:51)
ほとんどのリフォーム屋さんは・・
『金属サイディングによるカバー工法』のようです。
工期が短くて廃棄物処理の手間もかからないので
きっとリフォーム屋さんにとっては都合がいいんでしょうね。
by toyo (2009-02-03 01:41)
アサギいろ さん
今建てられている住宅の7割に使われているそうです。
今に日本中の家が、ボロボロになりそうです。
そうなって初めて騒ぎ出すのでしょうね。
by アキラ (2009-02-03 15:56)
セキスイさんなどのハウスメーカーは、独自に居林な材料を作って使っています。
SHセラミックウオールはセラミックの薄い版の裏に亜鉛メッキをした鉄板が裏打ちされたパネルだと記憶しています。
セキスイさんは理想的な外壁材だと宣伝していましたが、果たしてどうでしょう?!
by アキラ (2009-02-03 16:02)
toyoさん
『金属サイディングによるカバー工法』は、壁体内結露を増幅します。
良いことをお教えしましょうか^^;
『金属サイディングによるカバー工法』を施したお宅を3年後に訪ねてみてください。きっと、シロアリ駆除の仕事が待ってますよ^^
あ、その時には、大工さんやサッシ屋さんに外壁屋さんなども必要かも知れませんね^^;
by アキラ (2009-02-03 16:06)
☆なるほど~。
勉強になります!
サイディングについて、考えたことはほとんどないので。
塗り壁も、また、デメリットがあるのでしょうか?
by ijimari (2009-02-04 00:32)
セメント製品に窯業の文字がつくのに正直行って違和感を感じ続けていました。
セメント製品の場合はかつてのセメント瓦の場合もそうでしたが、外装材で使うとかなり厚いものでも十数年で脆くなって割れるとの印象を持っていました。
それを補うのにアスベストが使われていたはずで、アスベストを使わないセメント系の外装材が十年二十年単位の耐久性が本当にあるのか?、疑問を持っています。
とあるアスベストを使っていた大手屋根材メーカーの話を聞いたことがありますが、「アスベストは夢の材料だった。使えないとなると変わりになる原料は他になく途方に暮れてしまう」とのことです。(鉄筋とコンクリートの関係と同じように短所を補う関係のようです。)
その後の処分行程を考えなくてはなりませんが、私個人としてはセメントとアスベストの組み合わせで使っているものについては待機中の飛散などを考える必要が無く、認められても良いように思っています。
by たいせい (2009-02-04 11:38)
ijimari さん
塗り壁というと、主にモルタルのことだろうと思います。
モルタルそのものについては、「水分を吸収する」という特徴がある他に、
乾燥時に収縮します、そのためのヘヤークラックは避けられませんから、その辺に注意が必要です。それ以上に問題なのが、下地です。
これらについては、いずれ記事にしようと思っています。
by アキラ (2009-02-04 11:43)
たいせい さん
私も安定している瓦やサイディング、カイカル板などは認めてもいい派です。
米国では、珪藻土はアスベストと同じ危険ランクに指定されているのに、日本では野放しなんですから・・・
by アキラ (2009-02-04 11:47)
昭和52年、ナショナル住宅建材のニューファミリーF(という名前であったと思う)を新築した。それから17年位経って外壁間のコーキングがヒビ割れて溝が生じ、外壁も外から(多分)鉄骨の位置が判る位に変色し、手で撫でると白い粉が手に付いた。その為、塗り替えることにし、費用を聞くと70万円余りの由、足場を組むから云々。それで自分で塗ることにして材料を頼むと、塗料(水性)、コーキング(缶入りのシーラーも)、マスキングテープなどを持ってきた(価格は憶えていない)。
コーキングを剥がす時、両側はカッターで切れるが壁側は切れないのでそのまま引っ張るとするすると剥がれた。コーキングは壁とは殆ど接着しておらず、「ええ加減なことをしとりゃあがる」と思い乍ら剥がした。塗ってから1年程で壁を撫でると手に“おしろい”が付いた。
築後、何年か経って、プレハブの隅、何ヶ所もひび割れているのを発見。建築屋が写真を撮ってかえって、暫くして3万円の商品券を持ってきた。また、1階の天井の隅が滲んでいる。「それは、結露によるもので雨漏りではない」と言って帰った。
そうして、今年、築後、33年、2~3年前から外壁(プレハブ)を外から見ると(多分)鉄骨の位置が判る位にまた変色してきたので、塗り替えるべく、塗料は何が良いかとインターネット様の御世話になっている。当、「たたかう★アキラ」様を始め、色んな知識人の方々が智慧を授けて下さっており、有り難く思っている。プレハブ住宅の壁は直接、鉄骨に取り付けてあるとばかり思っていたが、プレハブ(外壁、サイディング)は釘で木版に取り付けていることなど露知らなかった。コーキングはシリコーン製らしく、塗料が付いていないし、有り難いことにひび割れも無い。
3~4日前から外壁の“おしろい”を取っている。今や、身体が痛うて痛うて。きょうも、“おしろい”を取っていたら、外壁の角が割れているのを発見。その割れは、打ち付けた釘が二分している。固い物であるから、釘を打つ前に、ドリル、錐で穴を明けてから釘を打たなければ、竹に直接釘を打つが如く必ず割れることは自明の理である。こうした、プレハブに関する智慧を、商品券を持ってきた時に知っていればヒビが入っている個所は全部、張り替えさせたのに。チッキショゥ、法律上、時、既に遅し。ヒビは全部僕が直さなければならない。然し、あの時、調べもしないで、「それは結露です」と言ったのだから、逃がさんどぅ。
by 高橋昌勝 (2010-09-24 00:17)