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「モルタル」の知識 [湘南の家づくり]

クラック.jpg


『モルタル』とは、「砂」と「セメント」を「水」で練って作られた「建築材料」です。

一般的には、セメントと砂とは重量比で、1:2~1:3の割合で混合されます。

ペースト状で施工性が良く、建築現場で混ぜて作ることが可能なので、外壁下地・目地材・

コンクリート面の仕上げや調整などに多く用いられています。



とろ舟.jpg 「とろ舟」

気を付けなければならないのは、「手捏ね」されたモルタルです。

建築現場では「とろ舟」と呼ばれる、「プラスティック製のバットのお化け」みたいな、

長四角の浅い箱にセメントと砂を入れて、水を差しながら「鍬」でコネているのを見かけます。

このようにして作られたのが「手捏ね(てごね)」されたモルタルです。


セメントと砂が均等に混ざり合っていないモルタルは、密着性に問題があります。

「たかが、捏ねるだけ」と、不慣れなアルバイトなどにやらせると、よく混ざり合っていないモルタルが

出来上がってしまいます。

ですから、現場では極力「小型のモルタルミキサー」を使って混ぜ合わせます。

ミキサー.jpg  小型の電動モルタルミキサー



建築関係以外の方は、コンクリートとモルタルの違いが分からないようで・・・

「コンクリート」との違いは、骨材(砂利)が入るかどうか(?)です。

コンクリートには砂利が入りますが、モルタルには入れません。

モルタルには、乾燥時に『収縮ヒビ』を生じるという『宿命』があります。


木造住宅では、開口部(窓など)の四隅から放射状のヒビが入ったり、

タイルを貼った壁で、中に柱が隠れている部分によくヒビが入ります。

窓廻りも柱の部分も重要な箇所で、ヒビが入って万一雨水が侵入すると家自体の劣化を招きます。


モルタルを塗る際に、板状に成形されている「ラス○ット」という製品を使う工務店があります。

表面が凸凹に加工された板状の建材ですが、これを使うことで、「モルタルの下塗りまでが省ける」ので、

急ぐ現場で(?)よく使われていますし、よく勉強をしていない工務店も使っているようです。



木造は地震等で構造自体が動きますので、「ラス○ットを」外壁に使用すると、

板の継ぎ目でヒビが入りやすいという特徴があります。

そのため、良心的な工務店は「ラス○ット」を使うにしても、面積が少ない内部だけで外部には使いません。

メーカーの売り文句は、壁に使うと「地震に強い」ということですが、地震の前に家が腐ってしまっては

「地震に強い」も意味がありません。


ではモルタルを塗る場合の下地としては、何を使えばいいのでしょうか?

一般的には、「波形ラス」と呼ばれる「金網」を張り巡らします。

その上にモルタルを塗り重ねるのですが、通常は「下塗り(ラスこすり)」・「中塗り」・「上塗り」と

左官職人が、何回も「乾いては塗り、乾いては塗り」と、コテで塗り重ねます。


家を建てる地域によって、「耐火構造」 「準耐火構造」 「防火構造」などと規制されていますが、

外壁のモルタル塗りは「耐火構造」には、使用できません。

外壁にモルタルを施工できるのは、「準耐火構造」と「防火構造」で、それぞれモルタルの厚さが20㎜以上、

15㎜以上と決められています。



私達はリフォームなどで外壁を解体することがありますが、「規定の厚さ」を守ってモルタルが塗られた家は

皆無に近いのが実状です。

『新築時の「現場監理が、如何ににおろそかに為されているか」を物語っている』と思っています。


建物の周囲において発生する「通常の火災」による熱が加えられた場合に、

「加熱開始後20分間は構造耐力上支障のある変形・溶融・破壊・損傷を生じてはいけない」

ことになっています。

外壁においては、この他に「加熱面以外の面の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること」

の規定がありますので、これをクリヤーするためにモルタルの厚さが決まっているわけですから、

決められたモルタルの「厚さ」を守ることが重要です。


『透湿防水紙』が出てくるまでは、どこの現場でもラス(金網)の下には『アスファルトフェルト』を

貼っていたものです。

新築現場を眺めていると、壁面にモルタルを塗る前の防水処置として「タイ○ック」などの『透湿防水紙』

を貼っている現場をよく見かけます。


アスファルトフェルトの色は「黒」で、透湿防水紙は一般的には「白い紙」ですから、

遠目でも一目瞭然で判ります。

モルタルの下に『透湿防水紙』を貼ると、何故かモルタルの密着度が悪く「モルタルが浮く」のです。

そのため、モルタルの下地の防水紙は、昔通りの黒い『アスファルトフェルト』とするのが正解です。


外壁がモルタル下地の場合、モルタルは「セメントと砂」ですからそのままでは雨水を吸い込みます。

従って、モルタルの外壁は必ず「防水の意味での塗装」が施されています。

ここで間違って戴きたくないのは、モルタルの外壁に塗られる塗装は「防水の意味での塗装」であって、

「美観のための塗装」ではない・・・ということです。

今から10年~15年ほど前に、『弾性塗料』という塗料が流行りました。

これは、塗装面(外壁のモルタルなど)にヒビが入っても、「ヒビに追随して伸びる性質を持っている塗料」です。

当時は、モルタル面のヒビを隠してくれるので、殆どの塗装屋さんが重宝してこれを使いました。


今、この「弾性塗料」が問題になっています。


塗膜が劣化すると雨水を吸い込むのは他の塗料と同じですが、弾性塗料が塗られたモルタルには

「必ずヒビが隠れている」ということを忘れてはいけません。

弾性塗料が塗られているにも拘わらず、外壁に凹みなどの異常が出てきて塗膜を剥がしてみると・・・

1㎝以上も幅がある大きなヒビ(こうなるとヒビではなく、割れ目です)が出現して、驚いたことがあります。

つまり、弾性塗料は1㎝を越えるようなヒビにも追随して、ヒビ(割れ目)を隠してくれていたのです。



外壁などに塗られた「塗装の塗り替え時期」をしっかり把握していると、外壁からの「雨水侵入」の懸念が

解消されます。


チョーキング.jpg チョーキング現象です。

塗装の塗膜は、劣化すると必ず『チョーキング現象』を起こすものです。


『指を開いた掌を強く外壁に押し当てて、そのまま横にずらすと「白い粉」が掌に付く』 ことがあります。

このように、「チョークの粉が手に付く」ような現象を『チョーキング現象』といいます。

美観上なんら問題がなくても、チョーキング現象が発生していることがあります。

チョーキングが起きている状態の塗膜は劣化が進んでいて、既に「水を吸い込む状態」になっている

ことを表していますので、「雨水侵入の有無の調査」と、「今すぐの塗り替え」が必要です。



「ラス○ット」にしろ「タイ○ック」にしろ、はたまた「弾性塗料」にしても、その時代、その時代の『新製品』です。

新しい物に挑戦するのは、決して悪いことではありません。

しかし、使ったらその後放置するのではなく、『その後の検証が必要』です。

それこそが、『プロフェッショナルとしての、責任ある仕事に取り組んでいる姿勢』なのです。




モルタルについて勉強している工務店があります。↓

三物建設株式会社は、湘南(茅ヶ崎 逗子 葉山 鎌倉 平塚 藤沢) エリアを中心に、マンションリフォームからペットリフォームまでお客様にとって最高の 「暮らし」をご提案いたします。

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コメント 14

e-g-g

たいへん参考、いや勉強になるお話でした。
築十年の我が家、
そろそろ外壁の様子も気をつけて見なければなりませんね。

by e-g-g (2009-02-27 22:38) 

アキラ

e-g-gさん

築10年というと、窯業系サイディングが使われ初めて間もない頃の新築です。
「サイディングは一生物」で、メンテナンスフリーだと思っている方が殆どですが、
実は10年経過はメンテナンスを施すには遅いくらいです。

モルタルに塗られた塗料も、使われた塗料によっては5年で塗り替えなければならないものもありますし、何が塗られたにしても、やはり10年が限度でしょうね。
チョーキングの有無を確かめられることをお勧めします。

by アキラ (2009-02-28 10:37) 

toyo

とても勉強になりました。
ありがとうございます。
by toyo (2009-02-28 21:15) 

ひろりん

モルタルとコンクリの違いに感動しました☆
砂利の違いだけだったんですかーなんか薬剤の配合の違いかと勝手に思ってました。
壁にもたれると背中が真っ白になったんは、そーゆー塗りなんかと思ってました☆
身近な住宅のことなのに知らないことってほんと多いですね~
by ひろりん (2009-02-28 23:37) 

龍之介

わかりやすく、よくまとまっていて

勉強になります。
by 龍之介 (2009-03-01 13:14) 

アサギいろ

モルタルはたいへんわかりました。漆喰の壁の漆喰はモルタルの一種なんでしょうか。
by アサギいろ (2009-03-01 17:56) 

masa

初めまして
さすが現場の職人さん、勉強になりました。
メンテも大事ですね!
こういう事ちゃんと言ってくれると信頼に繋がりますね

by masa (2009-03-02 00:37) 

アキラ

toyo さん

基礎のモルタル仕上げは「どうも?!」と仰っていますが、同じように「外壁に弾性塗料での仕上げ」もヒビを伝ってシロアリが昇ります。
toyo さんの職種にとっては、新たな商機になるかも知れませんね^^
by アキラ (2009-03-02 09:47) 

アキラ

ひろりん さん

壁にもたれると背中が真っ白になった・・・これは間違いなくチョーキング現象です。それもかなり進行しています。
外壁が水を吸っていますので、早めのメンテナンスが必要です。
物いりですが、家のためですよ^^
by アキラ (2009-03-02 09:50) 

アキラ

龍之介 さん

お誉め戴いて恐縮です。
文を纏めるのが下手で、いつもなが~い文になってしまいます。
読み疲れて飽きられるのではないかと思いながら書いています。^^;


by アキラ (2009-03-02 09:54) 

アキラ

アサギいろ さん

モルタルと漆喰は全く違います。
消石灰に麻の繊維や藁のほか、テングサ(海草=ふのり)加えて作られたものが漆喰です。
防水性に優れているため外壁にも使われますし、漆喰が持つ調湿機能を生かすために内壁や内部の天井などにも使われています。
最近その良さが見直されていますが、残念ながら漆喰を上手に塗る事が出来る職人さんは少なくなっています。
by アキラ (2009-03-02 10:07) 

アキラ

masa さん

ようこそいらっしゃいました。
3年以上前にIT音痴の私を見かねて、息子達が私の名前で勝手にブログを開設。「出来るもんならやってみな!」的なことでしたので、「よ~し!」と一念発起
今に至っております。
日々のつまらない事柄に加えて、建築関係の大事なことも書いています。
よろしければ、またお立ち寄り下さい。
masa さんのブログにもお邪魔させていただきます^^@

「俺は職人!」胸を張って、そう言えるといいのですが、残念ながら私は職人ではありません。
建築会社を30年以上経営しており、多くの職人さんに仕事をしていただいている立場ですが、私に「技量」はありません。
生まれ変わったら、「職人」として、正しい工事に努めたいですね^^@
by アキラ (2009-03-02 10:16) 

たいせい

 棟を鉄筋を入れたモルタルで施工する地域があるのですが、屋根で使うモルタルの場合セメントの比率が少なく、アルカリが足らず鉄筋が錆び膨らんで棟を破損させる場合などもあるようです。
 モルタルと一言で言っても難しいですね。
by たいせい (2009-03-04 10:52) 

MATO


いつまでも何かを待ってるだけで未来は変わらんだろjk。今のままの人生に満足してるのか?

ちょっとは行動してみる気、ある?
QOL(Quality of Life)上げたいなら試してみれば
http://yoofez1.nippon.charitie.info/yoofez1/
by MATO (2011-04-02 14:16) 

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